耳の病気について『症状からわかる耳の病気』- Ear

症状からわかる耳の病気

 

耳鳴がする

耳鳴は内耳の痛みとも言われます。ずっと持続していつも気になるような耳鳴は治療の必要性があります。耳鳴の原因はまず聴力が悪いときが多いようです。悪い部分の聞こえの神経が異常に興奮したり、聞こえない分が耳鳴として感じることがあります。また聴力は悪くなくとも耳鳴はおきますが、聞こえの神経が異常に興奮すること、神経性のものなどの原因もあります。耳鳴は他人にはわからないことですので、医師が耳鳴について理解しようとしなければ耳鳴が治ることは絶対にありません。当クリニックでは耳鳴研究会作成の耳鳴検査法に基づいて耳鳴を客観的に評価し、治療を行っています。

(1)内服治療(ビタミンB12、循環改善剤、精神安定剤、漢方薬)を経験に基づいて使用します。

(2)リドカイン注射を行い、内耳の神経の活動性を押さえることを目的とします。

(3)耳鳴りは脳過敏症ともいわれる、聴覚の過敏状態です。抗けいれん剤が有効です。

(4)TRT療法といって、一定の時間雑音を聞かせてその後耳鳴りの感受性を抑制する方法があります。

(5)近赤外線レーザーにより、血行を改善させます。星状神経節ブロックへ照射しています。

(6)認知行動療法がおこなわれますが、精神科医ではありませんので、よく患者さんとお話をします。そのために母国語が日本語でないとニュアンスがわからないので、よろしくお願いします。

これらを組み合わせて治療することで、かなりの耳鳴症例が回復します。時間はかかりますが、耳鳴は治らないとあきらめてはいけません。

 

耳が痛い

耳が痛い時の原因には、1外耳道炎、2急性中耳炎がもっとも考えられます。

1外耳道炎は外耳道の掃除のしすぎ、異物(ごみなど)の刺激に細菌が感染したことにより起こります。時に耳垢がたまっていることもあります。外耳道の知覚は敏感なのでかなり痛くなります。通常、聴力はあまり悪くはなりません。治療は、外耳道の消毒と抗生物質や真菌感染(かび)の時には抗真菌剤を使用します。

2急性中耳炎は小児の場合、咽頭より耳管経由で細菌感染が起こり、中耳に感染を起こす疾患です。さらに、膿が中耳にたまり、周囲を圧迫すると激しい痛み・熱発が起こります。治療は、細菌に対して抗生物質を使用する場合と、膿が多いために鼓膜を切開して排膿する場合があります(鼓膜切開術)。近年は抗生物質の感受性が低下し、薬が効かない細菌が増えてきているので、適切な薬の選択が早く治すためには重要です。中耳炎がなかなかなおらずに、痛みがひどくなったり、耳の後ろが腫れてきたり、耳漏がじゃぶじゃぶ出てきたら危険信号です。
その他、耳が痛いと感じる疾患には、異物、歯痛、顎関節症、外傷、神経痛、ウィルス感染症、慢性中耳炎などがあります。

 

耳が塞がった感じがする

1耳垢栓塞、2浸出性中耳炎、3低音部感音難聴、4鼓膜穿孔、5耳管狭窄症などが考えられます。

1耳垢栓塞は外耳道に耳垢がセメントのように詰まってしまう状態です。固くてすぐに取れない場合には耳垢を溶かす薬を点耳して取ります。

2浸出性中耳炎は鼓膜の内側の中耳に浸出液が貯まるために、音が伝わらず耳が塞がった感じがします。耳管の機能が悪いことが原因の一つなので、鼻をきれいにして、耳管通気療法を行います。小児で長期間耳が塞がった感じが続くと勉強についていけないことも起こるので、鼓膜を切開して排液する(鼓膜切開術)か、繰り返す場合には、鼓膜に小さな排液チューブを留置することもあります(鼓室内チューブ留置術)。

3低音部感音難聴はストレスなどが理由とも言われますが、内耳の低い音の聴力が急に悪くなる病態で、耳が詰まっている感じがします。めまいの発作が起こることもあり、メニエール病とも言われます。治療は、内耳に栄養を与える薬剤やステロイドホルモン剤を使用します。

4鼓膜穿孔は外傷(平手ではたかれる、ボールがあたるなど)、スキューバダイビング、慢性中耳炎で鼓膜に穴があく状態です。鼓膜は音を太鼓の膜のように響かせるので穴があいていると音が伝わらず、耳が塞がった感じがします。穿孔ができたばかりなら、特殊なシールを貼って鼓膜の再生を待ちます。慢性中耳炎の場合には、耳漏がなければ鼓膜再生手術を行います。

5鼻の奥と中耳をつなぐ耳管という管は外気圧と中耳の気圧を調節しています。この耳管の機能が低下した病気が耳管狭窄症で、鼓膜が内側にひっぱられている状態です。治療は、耳管にきれいな空気を通す耳管通気療法を行います。

 

耳がごろごろする

耳がごろごろすることは、皆さんの感じ方の違いによって様々な表現があると思います。多くは聞こえが悪くなることはなく、外耳道に異物があることが多いと思われます。異物は耳垢、毛、時にはゴキブリなどです。たいしたことはないと思っても、耳がごろごろするのは極めて不愉快なことなので診察をお受けになることをお勧めします。

 

耳が痒い

耳が痒くなることは、皆さんによくあることです。外耳道の刺激のし過ぎで感染がおきたり、外耳道皮膚が炎症をおこすために痒くなるのです。耳の痒みを我慢ができず、掻いてさらに外耳道皮膚を刺激すると悪循環になってしまいます。もっとも大事なことはなるべく我慢して掻かないことと、適切な薬を使用することです。

 

急に聞こえなくなった

ある日突然に聞こえが悪くなる病気でもっとも有名な疾患は、突発性難聴です。内耳にある聞こえの神経(有毛細胞)の障害で、原因はまだよくわかっていません。眩暈を伴うこともあり、車を運転している時などは危険です。

通常は聞こえないほうが塞がった感じ、電話が聞き取れないなどの症状で気がつくことが多いようです。なるべく早く治療を開始した方が回復する可能性が高いと言われます。治療は、内耳へ栄養を与えるビタミン B12、血液の循環改善剤、ステロイドホルモン、プロスタグランディン、酸素を多く供給させる高圧酸素療法、血液循環量を増加させる星状神経節ブロックが行われています。

耳鼻咽喉科では緊急に処置を必要とされる疾患の一つです。 その他、耳垢が完全に外耳道をパックしてしまったり、神経性のヒステリーなどで急に聞こえなくなることもあります。

 

だんだん聞こえが悪くなった

(1)お年寄りでだんだん聞こえが悪くなるのは老人性難聴です。年齢と共に高音域の聴力が落ちてきて、だんだん聞こえが悪くなります。聞こえの神経は回復しにくいので、日常生活に不自由がでてくれば補聴器の適応です。

(2)職場の大きな騒音、Walkmanなどのヘッドホンステレオの使い過ぎ、射撃などの強大音を長年聞いていると人間の耳はだんだん悪くなります。障害の部位は内耳の蝸牛内にある聞こえの細胞(有毛細胞)の脱落によると考えられます。正確な聴力検査と原因の除去が必要です。

(3)だんだん聞こえなくなったり、耳だれが続くような状態は慢性中耳炎です。写真のように鼓膜に穴が空いていて細菌感染が繰り返され、次第に聞こえが悪くなります。基本的には穴を塞いだほうが良いのですが、少なくとも耳鼻咽喉科専門医で定期的な処置が必要です。

 

音は聞こえるが人の話がわからない

人の耳はおおよそ 20から20000Hzまでの音を聞くことができます。犬は犬笛のようにやや高く、コウモリはもっと高い周波数の超音波を聞く能力があるのは有名です。会話の領域は、日本語は500から2000Hzまでで母音は低め、子音は高い周波数の特徴を持ちます。ですから、老人性難聴のように高音部の聴力が悪くなると、母音は聞き分けることができても子音の高い周波数の聞き分けが劣ってしまうので、音は聞こえても話の内容が分からないという事態になるわけです。最近では聴覚系の高位の異常でおこる「聴覚情報処理障害」という概念が言われています。耳鼻科での聴力検査では異常はないのに、特に雑音が周囲にあると聞こえないという症状です。決まった治療法はありませんが、当院でも積極的に治療をしております。

補聴器装用

補聴器は医療機器であり、耳鼻咽喉科の診察の後に認定技能士によって装用されるのが望ましいルートです。補聴器の適応を判断して、当院がお勧めする補聴器販売店に紹介をさせていただきます。この際に医療費控除も可能です。